ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
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私の愛妻の妹はイギリス男性と結婚していてイギリス在住。だから私の義弟はイギリス紳士なのです。
結婚後間もなく、義父母、義弟夫婦、私達夫婦で、愛妻方の親戚が多く住む九州旅行へ行きました。九州各地に住む親戚を訪ねて回ったのです。母にはショーステイに入ってもらい、私は一時的に介護から解放されました。私にとっては、初めての九州で、楽しくって仕方がない旅行でした。しかし、何故だか義弟が落ち込んでいました。疲れているのだろうか? 時差ボケだろうか? あるいは日本が嫌いになったのだろうか? と心配していました。でも、そういうことではなかったのです。
義弟は日本大好きで、語学学校で毎週日本語の勉強を続けてきたのです! しかし! いざ日本に来てみると周りの人が喋っている日本語が何も理解できない! 必死に勉強したのに全然役に立たない! と落ち込んでいたらしいのです。
それは、義弟が勉強を怠けていたからではありません。
語学学校が間違った教え方をしていたわけでもありません。
実は、私だって、その場の会話の半分くらいしか分からなかったのです。
海外では、ほとんどの場合、日本の標準語しか教えません。私も日頃は標準語を使っていますが、親戚や幼なじみと話していると、名古屋弁が激しく出ます。九州で親戚が集まっているのです。親戚同士というのは、お互いによく分かっているので、説明なしで最小限の単語で会話します。しかも方言が強くなります。分かるはずがないのです。
役者は基礎段階で方言を抜く訓練をします。その上で、方言で喋る役をもらえば、その方言を勉強します。しかし、方言の習得は難しいです。方言指導の方によほど丁寧に指導してもらわないと、土地の人にはバレてしまいます。究極的には、その土地で長期間生活しないと習得できないと私は思っています。私は大阪に六年住みましたが、土地の人には「何ですか? そのパチ臭い関西弁は!」と突っ込まれたことが何度もあります。
方言は語学の最後の難関。
日本語初心者である義弟が、いきなり最後の難関に挑んだのです。しかし、その経験は宝の山かも知れません。次に義弟に会うとき、恐るべき上達をしているかも知れません。
English
イラスト by フライニャン
結婚前は病的にやせていた愛妻ですが、結婚後ふくよかになりました。私も太りました。幸せ太りですね。介護のストレス太りかも知れません。
「こんな事ではいけない!」と愛妻はランニングを始めることにしました。
愛妻は形から入りました。本格的なランニングウェアにシューズにグローブ、そして高価なランニングウォッチを購入。上から下までバッチリ決めました。
我が家の近所には一周すると4㎞にもなる巨大な公園があります。その公園へ向かう途中、愛妻は一人の見知らぬ男性に声をかけられたそうです。
私も知りませんでしたが、その公園では年に一回、地元の学区対抗の駅伝大会があるのです。その男性はこの学区チームのマネージャーでした。なんと! 愛妻はその駅伝大会の選手にスカウトされたのです。ランニングウェアが決まっていたから、上級者だと思われたのですね。
愛妻は喜んでチームに参加することにしました。
最初の練習の日、集まったチームメンバーにコーチがこう言いました。
「じゃぁ、今日は軽めにして6㎞走りましょう」
愛妻はそれまで最長でも3㎞しか走ったことがなかったのに!
ウェアは上級者向けでしたが、中身は初心者です。大恥をかいたそうです。
しかし、それが良かったのです。
休みの日に集まって、賞金も出ない駅伝大会の練習をしようだなんて人たちは、学生の頃から陸上をやっているとかの筋金入りの上級者達ばかりです。例外もあるかも知れませんが、どの世界でも本当の上級者というのは初心者に対して優しいものです。知識や経験も豊富で、アドバイスも適切です。愛妻は見る見る上達しました。
その駅伝大会の代表には、まだ選ばれたことはありませんが、その年の名古屋ウィメンズマラソンに参加し、人生初フルマラソン、初完走を果たしました。初心者が四十二・一九五㎞を走りきるなんて、なかなかないことです。完走者にのみ配られるブランドのアクセサリーを手に入れて喜んでいましたよ。一人で黙々と練習していたとしたら、そうはならなかったでしょう。
形から入る人をバカにする人もいるかも知れませんが、いいこともあるかも知れません。周囲に「私はこれをやるんだ!」とアピールすれば、協力者が協力しやすいですからね。
私も次に何かを始めるときは、形から入ってみようと思います。
English
イラスト by sh204
ある芝居の打ち上げで、妙に気になる人が、筋向かいの席に座っていました。何が気になるかというと、私にはこの人の性別が分からなかったのです。身体の線は細い。でも髪は短く少年のようでもある。今回の公演のスタッフさんで、間近で見るのは、この打ち上げが、初めてでした。スタッフさんは皆、飾りっ気のない服を着ていて、そこからも性別は分かりません。
「そういう場合は手と首を見るといい」と昔、誰かに聞いたことがあります。痩せているので、手には血管が浮いていて、見ようによっては節くれ立っています。首も痩せているので、のど仏が出ているようにも見えます。しかし、決め手には、なり得ませんでした。
ほぼ男性だと、思っていましたが、声を聞くまで、断定はしないことにしました。
無口な人で、周囲は盛り上がっていたのに、なかなか声を発しませんでした。私はずっとその人が喋るのを待っていました。
ついにその人が喋りました。低い声でした。間違いない。
私は結論に達し、その人にこう声をかけました。
「女の子かと思った」
正解を知っている他のスタッフさん達は大爆笑でした。
実はその人は女性でした。
その女性こそが、今の私の愛妻です。
English
イラスト by sanno
父は他界する7年ほど前、私に新車を買ってくれました。まぁ、人工透析の送り迎えを、私にやって欲しかったんですね。ところが私は車に興味がないし、運転が怖い。数年、ドアさえ開けないで、ほったらかしにしてやりました。しかし、いよいよ父は運転を禁じられ、人工透析の送り迎えをしなくてはならなくなりました。しかし、同時に、私は送迎サービスのある病院を見つけました。だから病院の送り迎えは数回で、後は、近所に買い物に行ったくらいで、ほとんど運転しませんでした。ディーラーの営業の人に「これならレンタカーした方が安いですよ」と笑われました。
父は他界し、その車は売ることにしました。小中と同級生だった人が近所で自動車修理工場を営んでいるので、見積もりをしてもらうことにしました。彼は車を調べた後こう言いました。
「23~25万円。23万なら今すぐ欲しい」
そこで少し悩みました。彼とは小中と、それ程、仲良くありませんでした。よそで聞いてみたらいくらになるだろう?
今度は、テレビやラジオのCMでおなじみの大手中古車会社に持ち込んでみました。受付の人はパソコンをはじいて値段を出しました。
「4万5千円」
ずっこけました。そして、同級生を疑ったことが恥ずかしくなりました。即座に引き返して、旧友に24万円くらいで売ろうと思い、席を立とうとしました。ところが、その中古車会社の人が帰してくれない。売ってくれとうるさい。
「いくらなら売ってくれるんですか? 言ってくださいよ! 私も命かけてこの仕事やってるんですから!」
それならと、言ってやりました。
「26万円!」
中古車会社の人は一瞬ひるみましたが、結局、渋々ながらその値段で買い取りました。
中古車業界ってどうなってるの?
すべての業界に友達が要りますね。
English
イラスト by しんたこ
家族がこの世を去るのは、辛く、悲しいことですが、悪いことばかりではありません。
2007年1月、同居していた母方の祖母が他界しました。
祖母はお風呂に入浴剤を入れるのを嫌いました。私は入浴剤が大好きなのに! 我が家で一番偉かったのは祖母でした。当時、芝居をしていた私は生活が不規則でしたので、私が祖母よりも先に風呂に入ることもありました。だから、入浴剤は使えなかったのです。
祖母が他界したからには、これから入浴剤を使えます。葬儀のドタバタが落ち着いて、最初の買い物で、私は気になっていた入浴剤を買ってきて、浴室に置いておきました。
次の日、父が先にお風呂に入りました。その後、私が入ったのですが、浴槽を見て驚きました。私が買ってきた入浴剤がすでに湯船に入っていたのです。知りませんでした。父も入浴剤が好きだったのですね。私と同じように、祖母に遠慮して使わなかったのです。
しかし、湯船に足を入れた時、もっとびっくりしました。足の裏にザラッとした感触が。まさか!
父は一箱、約30回分入っている入浴剤を、この時、一度に全部使ってしまったのです。容器は空になっていました。流石に30回分はお湯に溶けきらないので、底に沈んでいたのです。
私は何故そんなことになったのか、色々考えました。
1,30回分入の入浴剤を、一回使い切りタイプだと勘違いした。
2,入浴剤を使えるのが嬉しすぎて、お祝いに全部使ってしまった。
3,入れようとしたら、指が滑って容器が湯船に落ちた。
まぁ、3が濃厚ですね。父は永年、人工透析をしていました。人工透析をしている人は毛細血管が弱くなり、指先に力が入らなくなるらしいのです。
お風呂から上がっても、私はこの事を父に追求しませんでした。知らん顔してやったんです。
しかし、父は自分の失敗を申し訳ないと思ったらしく、それ以降、毎月、入浴剤を買ってきてくれるようになりました。当時、貧乏だった私には、ありがたいことでした。
一度で30回分の入浴剤を使った、贅沢なお風呂の入り心地ですか? ザラザラするだけで、何もいいことはありませんでしたよ。
物事には、ほどほど、というモノがあります。
イラスト by takagix