ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
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私が中学生の時、同居していた父方の祖母が他界しました。私にとっては初めての近親者の葬儀でした。でも中学生ですからね。人の死の事なんて真面目に考えていなくて、目の前で起こる珍しいことばかり気にしていました。
死んだその日に、地元の若い和尚さんが家に来て、お経をあげました。これを枕経というそうです。
その和尚さんの声が、すごくいい声で、しかも大音声でした。そして文字通り、祖母の部屋のふすまが震えたのです。私は人間の声で、ふすまを振るわせる事ができるという事に驚きました。後に、小説などで「ふすまが震えるほどの大音声・・・」とかの表現が出てくる度に、これはたとえではなくて、本当に起こる現象なのだと、その和尚さんのことを思い出したものです。
通夜、告別式は近所のお寺で行われました。不謹慎なことに、私はその和尚さんのお経を楽しみにしていました。あの大音声がもう一度聞けるのだと。
しかし、当日ガッカリしました。
確かに、その若い和尚さんは来ましたが、別の年配の僧侶と一緒で、2人で声を合わせて読経したのです。そして、若い和尚は年配の僧侶に合わせて、声を抑えていたのです。ついに大音声は一声も発せられることなく、出棺となりました。
当時、私は中学生。年配者に配慮して、若い人が実力を出せないのを歯がゆく思っていましたが、最近考え方が変わってきました。
声を合わせることが大切なのです。ライブならソロのパートもあるでしょうが、きっと、お経は老若2人の僧侶が声を合わせて唱えることが大切なのでしょう。
私もそろそろ老境。若い人の足を引っ張らないようにしないとなぁ。
イラスト by レナ
西暦2000年。私の祖父祖母が住んでいた名古屋の家を手放すことになりました。当時、大阪に住んでいた私は、何回か通って、片付けをしていました。片付けを始める前に、祖母に気になることを言われました。
「この家のどこかにピストルがあるから、見つけて警察に届けて欲しい」
私は本気にしませんでした。
気にせず作業していたら、メモが出てきました。祖父が書いたメモのようです。祖父は戦時中に亡くなっています。家計簿が書いてあって、切手5円とか何々3円とか書いてありました。昭和はインフレの時代です。その中に「たま」150円と書いてありました。切手が5円とかの頃に150円する「たま」とは、うどんのたまではありません。「これはある」と思って、まず拳銃から探すことにしました。
祖父は母が小学1年生の時に他界していて、私は会ったことがありません。しかし血縁とはおそろしい物で、私ならここに隠すだろう、というところを探したら、一発で拳銃が出てきました。弾も三発出てきました。1発50円という所でしょう。
拳銃に寄り添うように、紙が隠してありました。読んでみると、我が一族の運命を大きく変えた手紙でした。
それは、祖母が書いた、祖父からのプロポーズへの返事の手紙だったのです。手紙の中で、祖母は結婚するにあたって、祖父に一つ条件を出しています。「妹が医師を目指しているが、家族から反対されている。妹に月〇〇円の仕送りをしてくれるなら結婚する」という内容でした。
祖母の妹、私の大叔母は女医になっています。祖父は約束を守ったのです。
なぜこの手紙が拳銃の横に? そもそも何のための拳銃なのか?
ここからは推測ですが、戦時中、混乱する世の中、病気で衰弱していた祖父は自分の命が短いことを悟っていたのでしょう。だから、一家心中を考えていたのかも知れません。妻と幼い子どもを混乱の時代に残して、死ななければならない人の気持ちを想像すると、不思議ではありません。当時、三人家族でしたから、弾は三発。
しかし、祖母の手紙を読んで思いとどまっていたのかも知れません。手紙と拳銃を何度も繰り返し見て、ついに、病気で死ぬことを選んだのかも知れません。
おじいさん! よく思いとどまってくれましたね! おばあさん! いい手紙を書いてくれました! 母が小学1年生で一家心中していたら、私は生まれることさえできませんでしたよ!
遺品の整理というのは劇的な発見をもたらしたりしますよ。
English
イラスト by Happypictures
亡き父はテレビを好んでご覧でした。お好みの番組はニュース、野球、時代劇でした。新聞の記者でしたから、毎日のニュースをチェックするのは当然ですね。中日新聞でしたから、ドラゴンズの応援をするのも当たり前ですね。でも、時代劇が好きなのは少し不思議に思っていたのです。そもそもフィクションに興味のない人でしたから。
父は他界する数ヶ月前、親戚が集まった酒宴で、誰にも話したことがないという秘密を打ち明けました。父は学生時代、「大岡越前」の加藤剛さんと一緒に芝居をしたことがあるのだそうです。加藤剛さんといえば、名作には、ほぼいつも登場する時代劇の大スターです。
父は時代劇が好きなのではなくて、昔の芝居仲間の活躍をこっそり、応援していたんですね。秘密にしていたのは、自慢話だと思われたくなかったからでしょう。加藤剛さんはスター過ぎます。
親愛なる芝居仲間の皆さん! 誰か加藤剛さんのくらいに活躍して下さい。私はおじいさんになるまで、こっそり応援して、死の直前に親戚に自慢がしたいです。
English
イラスト by チポリ
2000年代の初め頃、私はちょっとかわった一人遊びをしていました。当時はすでに新聞をとらなくても、ネットで主だった内容は読める時代で、朝日新聞の「天声人語」と中日新聞の「中日春秋」などがタダで読めました。
「天声人語」と「中日春秋」どちらが面白いだろう? 毎朝、二つのエッセイを読み比べて、点数をつけて勝敗を一人で決めていました。
一年くらいこれをやった結果、当時の「天声人語」VS「中日春秋」では4:6で「中日春秋」の勝ちでした。もちろん、私の独断です。今はどうか知りません。
父は中日新聞に勤めていました。この結果を話したら、さぞや喜ぶだろうと思い、帰省の折、話してみると、全然喜びませんでした。それどころか怒りだしたのです。
「アイツは一日にあれ一本だけ書いとればいいんだから、そりゃいい文章も書けるわ!」
担当者と仲が悪かったようです。
演劇人として解釈するなら、家族が芝居を見に来てくれたのは嬉しいけれど、自分と仲の悪い役者ばかり褒める、という感じなんでしょうか?
「芝居面白かったよ。この間、東京で見た芝居よりも面白かった。特に〇〇さんがよかった!」
人間、遠くの敵より、近くの敵が憎いものですね。
English
イラスト by Igor Sapozhkov
私の親戚は近所で小児科病院を開業しています。本来、大人の診察は行っていないのですが、そこは親戚特権。風邪をひいたときなどには、歩いて行けるその小児科病院で受診しています。
ある日、風邪をひいて、その病院の待合室で待っていると、看護師がこう言いました。
「はーい、周二朗ちゃーん。先生が待ってますよー」
看護師は私の周囲をきょろきょろして、
「あれ? 周二朗ちゃんは?」
と聞いてきたので、答えました。
「私が周二朗ちゃんです」
新しい看護師で、医院長と私の関係を知らなかったのですね。まさか私が患者本人だとは思わなかったのです。小児科病院ですからね。
恥ずかしかったです。
かといって、よその病院を受診したことが知れると、その親戚は怒るのです。あれ? この親戚特権、ペナルティーに近いぞ。
大体のところ、特権というのはペナルティーとセットになっていますね。
English
イラスト ケイーゴK