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三浦 周二朗ブログ

 ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。

アンコール・ワットへの道

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アンコール・ワットへの道

 

 

1980年代の終わり、母はベトナムへ中古ミシンを送るという活動を始めました。日本の高度成長を内職で支えたミシンは国内では活躍の場を失いましたが、戦争で傷ついたベトナムでは必要とされるアイテムでした。母は1200台のミシンをベトナムに送りました。私もその活動に多少参加していて、ベトナムへ行く機会がありました。ベトナムのついでに、隣国カンボジアのアンコール・ワット遺跡へ行こうという事になりました。

当時カンボジアも戦争の傷が癒えない時代。陸路よりも飛行機で行った方が安全だという事で、カンボジアに近い、ベトナムの空港に行きました。ところがこの空港にびっくりしました。空港というよりも、地方の駅ぐらいの小さな一階建ての建物なのです。飛行機はまだ一台も来ていません。そこに沢山の人が集まっていました。100人を軽く越えるほどです。

やがて小さなボロボロの飛行機がやってきました。私は同行した日本人に冗談を言いました。

「あの飛行機に全員乗ったら、立って乗る人が出るよね」

一同大爆笑でした。

 世の中で何が最悪って、冗談が本当になる時です。飛んできたのはその小さな飛行機一台きり。駅のような空港に集まった100人くらいの人たちは全員その飛行機に乗ったのです。立って乗る人? もちろんいましたよ! 通路もギュウギュウ満員列車状態です。私は運良く座れましたが、フライト・アテンダント以外が立って乗る飛行機なんて初めて見ました。

 更に怖かったのは飛行機の内側の壁が至る所、ガムテープで補強されていたのです。え? この飛行機、壁にヒビが入っているのですか?

 季節は夏。ベトナム・カンボジアはカラッとしていますが、暑かったです。その飛行機にはエアコンは入っていませんでした。

 バリバリ、ミシミシとすごい音を立てて離陸。バラバラになるのではないかとドキドキしながら乗っていましたが、ようやく安定飛行にたどり着いたようでした。するとどこからともなく涼しい風が・・・。

(クーラー入れてくれたんだ。節約のために離陸するまでクーラーを入れなかったんだな・・・)

 そうではありませんでした。上空の冷たい空気が、飛行機の壁の隙間から入ってきたのです。よく見るとガムテープの隙間から、真っ白い外気が飛行機内にプシューっと入ってきていました。やはり、この飛行機の機体にはヒビが入っていたのです。外気はドンドン入ってきて、ついには隣の席の人の顔が見えないくらい真っ白になりました。

 この時代、この地域の立ち入りは制限されていて、アンコール・ワットの遺跡を見られる外国人は限られていたそうです。この3年後、世界遺産に登録されています。貴重な機会でした。

 でも、何も覚えていない。あのボロボロの飛行機のことしか思い出せません。当時私はまだ19歳。私が歴史に興味を持ち始めたのはもう少し後のことで、この頃は訳の分からない建物、としか認識できなかったのです。

アンコールの遺跡、もう一度見たいなぁ!

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イラスト
by freehandz

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