忍者ブログ

三浦 周二朗ブログ

 ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。

祖父の銃

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

祖父の銃

 

 

 西暦2000年。私の祖父祖母が住んでいた名古屋の家を手放すことになりました。当時、大阪に住んでいた私は、何回か通って、片付けをしていました。片付けを始める前に、祖母に気になることを言われました。

「この家のどこかにピストルがあるから、見つけて警察に届けて欲しい」

 私は本気にしませんでした。

気にせず作業していたら、メモが出てきました。祖父が書いたメモのようです。祖父は戦時中に亡くなっています。家計簿が書いてあって、切手5円とか何々3円とか書いてありました。昭和はインフレの時代です。その中に「たま」150円と書いてありました。切手が5円とかの頃に150円する「たま」とは、うどんのたまではありません。「これはある」と思って、まず拳銃から探すことにしました。

祖父は母が小学1年生の時に他界していて、私は会ったことがありません。しかし血縁とはおそろしい物で、私ならここに隠すだろう、というところを探したら、一発で拳銃が出てきました。弾も三発出てきました。1発50円という所でしょう。

拳銃に寄り添うように、紙が隠してありました。読んでみると、我が一族の運命を大きく変えた手紙でした。

それは、祖母が書いた、祖父からのプロポーズへの返事の手紙だったのです。手紙の中で、祖母は結婚するにあたって、祖父に一つ条件を出しています。「妹が医師を目指しているが、家族から反対されている。妹に月〇〇円の仕送りをしてくれるなら結婚する」という内容でした。

祖母の妹、私の大叔母は女医になっています。祖父は約束を守ったのです。

なぜこの手紙が拳銃の横に? そもそも何のための拳銃なのか?

ここからは推測ですが、戦時中、混乱する世の中、病気で衰弱していた祖父は自分の命が短いことを悟っていたのでしょう。だから、一家心中を考えていたのかも知れません。妻と幼い子どもを混乱の時代に残して、死ななければならない人の気持ちを想像すると、不思議ではありません。当時、三人家族でしたから、弾は三発。

しかし、祖母の手紙を読んで思いとどまっていたのかも知れません。手紙と拳銃を何度も繰り返し見て、ついに、病気で死ぬことを選んだのかも知れません。

おじいさん! よく思いとどまってくれましたね! おばあさん! いい手紙を書いてくれました! 母が小学1年生で一家心中していたら、私は生まれることさえできませんでしたよ!

遺品の整理というのは劇的な発見をもたらしたりしますよ。

English
イラスト
by Happypictures

PR

コメント

プロフィール

HN:
三浦 周二朗
性別:
非公開

P R