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三浦 周二朗ブログ

 ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。

結晶性知能

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結晶性知能

 

 母に認知症の診断が下って、5年ぐらい過ぎた頃でしょうか? 母はもう自分の名前が正しく書けないこともあるくらい病気が進んでいました。

母の友人たちのイベントに招待されて、その会場に母を連れて行きました。当時、私は車の運転ができませんでしたので、電車で行きました。認知症患者を電車で移動させるのは大変です。駅は混雑していて、複雑で危険です。一瞬も目を離せません。どこで何があるかわからないので、少し早く家を出ましたが、思いのほかスムーズに会場につきました。会場にはまだイベントのスタッフが数人準備のためにいただけでした。

会場にはピアノがあり、ピアノの前にはイスがありました。長い時間歩いた母を休ませようと、とりあえずピアノの前のイスに座らせました。私がスタッフの方と世間話をしていると、突然、母がピアノを弾きだしたのです。

決して上手ではないけれど、ちゃんと曲になっているのです。今がいつで、ここがどこかも思い出せない人が、自分の名前も正しく書けない時もある人がピアノを弾いたのです。そもそも私は母がピアノを弾けたことを知らなかったので二重にびっくりしました。詳しく知りませんが、母はピアノを習ったことがあるようです。

アルツハイマー型認知症患者の多くは、繰り返し体で覚えたことは、かなり病気が進むまでできるのだそうです。病気になっても比較的残る能力のことを結晶性知能と言うそうです。繰り返すことで知能が結晶のようになって守られるんですね。

私の場合は何が結晶性知能となるんでしょうね? 発声練習の「あめんぼのうた」とかは高校演劇でずいぶんやったので、認知症になっても言えるかもしれません。入所した老人施設のイベントで舞台に立つ機会があったとしたら、私は突然「あめんぼのうた」を言い出すかも知れません。私を世話する介護職員の方たちは理解できなくて、何か呪文の詠唱を始めたとか思うんでしょうね。隔離されるかもしれません。

ピアノでも習っておけばよかった。


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イラスト
by Frog

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