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三浦 周二朗ブログ

 ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。

母と通帳

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母と通帳

 

 

 母の認知症の症状が出始めたとき、困ったことの一つは母が銀行通帳をなくすことでした。何度もなくし、何度も再発行する。再発行したら前の通帳が出てくる。古い通帳は使えません。新しい通帳は、またなくしています。必要なときにお金を使えないのは困ります。

 当時、母にはマネージャーのような人がいて、会計士も付いていました。ある日、マネージャーと会計士に母の通帳を私が預かるように言われました。親の通帳というのは見てはいけないモノのような気がしましたし、当時まだ認知症について深刻に考えていなかったので、預かってそのままにしておきました。

 ある日、私が帰宅すると母がカンカンに怒っていました。

「私の通帳がない!」

私は正直にマネージャーと会計士から預かったことを話しました。すると母はさらに激怒しました。

「人の通帳を勝手に触るとは何事だ!」

仕方がないので預かった通帳を母に返しました。

 数日後、今度はマネージャーと会計士に激怒されました。

「どうせすぐなくす! 通帳を再発行するのにどれだけ手間がかかると思っているのだ!」

その通りになりました。母はその後、何度も通帳をなくして大騒ぎでした。

 私がたどり着いた解決策はこうです。まず、通帳をなくしたフリをして、銀行に再発行してもらいます。最新の通帳は私が管理して、母には無効の古い通帳を渡します。母がその通帳をなくしたら、一緒に探すフリをして、私が管理している通著をこっそり置いておいて、母自身に見つけさせます。母が安心して気がそれたら、通帳を取り戻し私が管理します。

 母の持っている通帳が無効の通帳であることを気づかせないために、つまり、通帳を使う機会がないように、母の財布の中には常にお金があるように注意しなくてはいけませんでした。

 めんどくさいし、母と銀行をだましているようで心苦しいですが、これ以外の解決法を見つけることが出来ませんでした。

 高齢者は通帳をながめているだけで安心することがあるそうです。私は自分の通帳をながめると不安になりますけどね。

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