ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
母に認知症の診断がおりた頃、近所の写真店を経営する夫婦と認知症の事で話したことがあります。その夫婦も認知症の親を抱えていたのです。
ある日、夫婦が満面の笑顔で私に言いました。
「やっと特養に入れることになったんですよ!」
実はこの頃、私はまだ母の介護をはじめたばかりで、この言葉と満面の笑顔の意味がわかりませんでした。親を施設に入れるのに、何を喜んでいるのだろうとか思っていました。
十数年の同居介護を経て、私も、母を施設に入れる決断をしました。下の世話も始まっていて、つらかったです。認知症患者は24時間年中無休の世話を要求します。私は眠る時間さえ確保できず、死ぬほど忙しかったです。認知症患者は事故を起こしたり、巻き込まれたり、転んだりします。私は常に重い責任を背負っていました。しかし、ついにここまで、無事たどり着いたのです。母を施設に入れた日から、生活は一変しました。つまり、何のハンディもない、普通の暮らしに戻ったのです。それは素晴らしいことでした。この喜びを満面の笑顔で誰かに伝えたいと思いました。
でも、やめました。この喜びは、本当に介護で苦労した人にしかわからないのです。私がどんなに嬉しくても、客観的には親が病気で衰弱したのです。家族と別れて住むことになったのです。在宅介護をあきらめたのです。満面の笑顔で表現すべき事ではないのかもしれません。表現された方も、「おめでとう」とは言いにくい状況です。
介護のゴールは入所か、入院か、葬式です。つらく長い道の果てに、誰もが手放しで喜んでくれるという結果は待っていません。
これが介護のつらいところですね。
English
イラスト by koti