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三浦 周二朗ブログ

 ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。

お買い物

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お買い物

 

 

 母は成功者で、趣味を仕事に、仕事を趣味にしたような人でした。それはつまり無趣味を意味するかもしれません。現役の頃は忙しいばかりでしたよ。おそらく最大の楽しみは、毎週、父と遠くのスーパーへ車で買い物に行く事だったのかも知れません。父も母も戦中戦後のモノのない時代に育っています。買い物そのものが最大のレジャーだったのかも知れませんね。

 母に認知症の診断がおりて年くらいした頃でしょうか。デーサービスには毎日行っていましたが、日曜日は休みです。かつては日曜日には、父が買い物に連れて行ってくれていましたが、父は他界してしまいました。私の愛妻も舞台関係の仕事をしているので日曜日は忙しく、私は母と二人きりで過ごさなくてはなりませんでした。母を一人にするとどこかへ行ってしまって、帰って来られなくなる可能性があったからです。

 その頃、私が日曜日に母としていたのは買い物ごっこでした。我が家から最寄りのスーパーまで徒歩三十分ほど、一緒にゆっくり歩いて行きました。認知症の進行の予防には歩くのがいいと言われています。スーパーに着いたら、母に買い物カゴを渡し「好きなモノを買って下さい」と言って一人にしました。私は喫煙所へタバコを吸いに行きました。そのスーパーの喫煙所はすべての出入り口を一望できる構造になっていて、私がタバコを吸っている間に母がスーパーを出てどこかに行ってしまう心配はありませんでした。一服終えて、スーパーの中に戻ると、母が何かしらカゴの中に入れていました。それをお会計して、その日は母の選んだ食材を夕飯にしていたのです。

 うまくいくときもあるのですが、うまくいかないときもありました。母の選んだ食材の調理方法が分からない場合があったのです。仕事から帰った愛妻に「これ、どうやって食べるか知ってる?」と聞いても分からない場合もあったのです。スーパーというのは、自分のなじんだ食材しか並んでないと思い込んでいましたが、実際、母に選んでもらうと、どう食べていいのか知らないモノも並んでいるんです。お母さん! そもそもあなたもこんなモノを調理したことないでしょう? 私は食べたことありませんよ!

 農家の皆さん、漁師の皆さんごめんなさい。調理法が分からず、何度か食材を捨ててしまったことがあります。でも、買い物した後は、母は少しご機嫌がよかったんですよ。

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イラスト
by Sato

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プロフィール

HN:
三浦 周二朗
性別:
非公開

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