ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
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母に認知症の診断が下って間もなく、私には耐えられない事態が起こりました。
私はその頃、かなり真剣にダイエットをしていて、いろいろな方法を試したのですが、なかなか成果が上がりませんでした。そこで自分で思いついたのが、名付けて「あしたのジョー」ダイエット! 私の世代の男の子は誰でも知っている「あしたのジョー」。こんなシーンがあります。ジョーのライバル力石(りきいし)は減量のため、激しいトレーニングにもかかわらず、食事は一日にリンゴを一個だけ! 結果として力石の命を削った減量法ですが、私の世代はこのシーンで熱くなったものです。
力石ほどにしたら死んでしまいますので、朝昼は普通に食べて、夕飯をリンゴ一個にして、それを丸かじりするというダイエット法です。もちろんリンゴはフロ上がり。冷蔵庫でキンキンに冷やしておいたものを、がぶり!
ところがこのリンゴを、昼間の間に母に食べられてしまうという地獄が始まったのです。
当時私は車の運転ができなかったので、リンゴを買ってくるのは大変でした。遠いスーパーから重いリンゴを運んできて、一日一個だけ冷蔵庫に冷やしておく。夜、お腹が空くけど、フロ上がりに冷えたリンゴが待っている。力石のテーマを口ずさみ冷蔵庫を開けると、リンゴがない!
この時ばかりは、はらわたが煮えくり返りました。
冷蔵庫に楽しみにとっておいたものを家族に食べられる。そんな経験はどなたもあるでしょうが、夕飯そのものがなくなっているのです。しかも母は認知症です。注意してもなおらないのです。
「冷蔵庫のリンゴを食べないでください!」
「リンゴなんか食べとらん!」
覚えていないのだからしょうがありません。毎日リンゴを冷やすのに、毎日母にリンゴを食べられるのです。
「私が買ってきた私のリンゴなんだから、勝手に食べないでください!」
「リンゴを買ってきたのは私だ!」
認知症患者は思い出せない記憶は自分に都合がいいように思い出す傾向があります。認知症患者は自己有利の嘘をつくことを介護者は覚えておかなければなりません。理屈は知っていますが、受け入れるのが難しいのです。
「ああ! そうか! なら2つ冷やせばいいんだ!」
2つとも母に食べられてしまいました。
フロ上がりに冷たいリンゴが食べたいだけなのに!
困り果てました。どうしたかといいますと、中古の冷蔵庫を買って、車庫に設置したのです。母は車庫には興味がありません。リンゴは無事なのです。
認知症介護には手間も暇もかかりますし、知恵を絞らないといけない時や、お金をかけないといけない時もあります。介護保険は一部の介護用品の費用を負担してくれますが、この中古の冷蔵庫を買うお金は介護保険の適応範囲外でした。
イラスト by Rien