ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
私と愛妻の新婚旅行は東京ディズニーランドでした。バブル世代である私の周囲の人と比べると、ものすごく近場です。しかし、その時期は我が家の介護が本当に過酷で、とても遠い海外になど行ける状況ではなかったのです。電話一本ですぐに帰宅できる国内にしか行けませんでした。
その後も、母と同居している間は、ほんの一泊旅行でも、段取りが色々大変でした。
現在、母には近所の施設に入ってもらっています。
さぁ! 失われた新婚旅行を取り戻すべく、海外へ!
実は、まだ行っていません。
二人で国内のテーマパークに行っています。愛妻はテーマパークが大好きなのです。
私は結婚するまで、テーマパークに興味がなかったので知りませんでしたが、パークの中では仮装しているお客さんも結構多いんですね。
郷に入っては郷に従え。私も先日、ちょっと可愛い帽子をかぶって行きました。スタジオジブリの「魔女の宅急便」に登場する黒猫のジジが描かれた野球帽です。
パーク内のレストランで食事をしようとしました。入り口に若い店員さんが二人いました。一人が私の帽子に気づいて、もう一人の店員さんにこう言いました。
「見て! 見て! この人ジジだよ!」
するともう一人の店員さんは驚いたような顔をして、弱い声でツッコミました。
「誰がジジだ」
この会話の意味が分からなくて、レストランの中で、ずっと食事しながら考えていました。そして衝撃の結論に至ったのです。
あのもう一人の店員さんは「魔女の宅急便」を見ていなかったのですね。もう古い作品です。だから私の帽子がジジだと分からなかったのです。そして勘違いをしたのです。あの会話はこういう事だったのです。
「見て! 見て! この人ジジイだよ!」
「(お客様に向かってジジイってあんた!)誰がジジイだ」
二人に悪意はありません。私の容姿にジジイの要素がなければ、そもそもそんな勘違いは起きなかったのです。
魔女の宅急便は英語圏でも公開され、英語版のジジの声の吹き替えをしているのはフィル・ハートマンというコメディアンです。日本ではあまり知られていませんが、「千の顔と千の声を持つ」といわれる名優です。日本語版ではジジは少年のような声ですが、英語版ではオッサンの声なのです。
一九九八年のアメリカ留学中、テレビでフィルの演技を見て度肝を抜かれました。当時、深夜にフィルのコメディードラマが放送されていたのです。留学期間が終わるとき、「一目フィルに会いたい」「出来ることならフィルの弟子になりたい」と思い、本気でフィルのことを調べました。調べてびっくりしました。フィルはすでに死んでいたんですね。私が毎晩見て、大笑いしていたドラマは再放送だったのです。
「魔女の宅急便」のジジの吹き替えはフィルの生涯最後の役になりました。収録の直後、フィルは謎の死を遂げています。フィル、四十九才のことです。
この文章を書いている今、私はちょうどフィルが死んだ年と同じ年齢です。来週には、私はフィルよりも年上になっているはずです。あこがれの人の年齢を追い越すのは複雑な気持ちですね。
私がフィルの事を知ったのは二十代の時。その時、私はフィルの映像を見てジジイだと思いました。フィルと同じ年になって、若者からジジイ呼ばわりされるのは、フィルに対してフェアです。
フィルの生きることの出来なかった年齢を、大切に生きていきます。
English
イラスト by FUTO