ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
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1990年頃、学生だった私は名古屋球場のスタンドで、お酒や焼きそばを売るバイトをしていました。この頃まだナゴヤドームはできていません。
「日本酒―! 焼きそばー!」
と声を上げて、スタンドを回る仕事です。商品の重さも、階段の昇り降りも気にならない若者でしたし、時給で考えるといい仕事でした。
ところで、私は高校演劇出身です。当時の高校演劇というのは少し病的なくらい発声練習を一生懸命していました。基本、上演の場所は体育館ですからね。おかげで売り子としての私の声もだいぶ大きかったのでしょう。
ある日、一人のご高齢のお客さんが私に一万円札を見せてこう言いました。
「この打席で落合がホームランを打ったら、お前の持っているモノを全部買ってやる! ツリはいらん!」
私は狂喜しました。私の持っている商品を全部売ったとしても一万円には遠く及びません。1500円の基本給に歩合制、日給にするとこの仕事は一日一万にはるか及ばないのです。おそらくこのお客さんは、声の大きな私に、落合本人に届くくらいの大きな声で、声援を送ってほしかったんですね!
「落合! ホームラン!」
落合は球史に残る強打者。しかし、私の声は届かなかったのか、その打席惜しくも凡退でした。もちろん一万円はもらえず、私はただの売り子に戻りました。
あの老紳士、もし落合が本当にホームランを打っていたら、私の持っていた商品を全部買ってくれて、飲み物や食べ物を周囲の人に配っていたんでしょうね。イキなお客さんもいたものです。
お金持ちの野球ファンの皆様! 今年はこういうイキな野球観戦はいかがですか? 私の経験から言うと、こういう場合、どんな名選手も、めったにホームランは打ちませんよ!
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イラスト by Palto