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三浦 周二朗ブログ

 ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。

パーフェクト

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パーフェクト

 

 私は学部生の時、ボウリング場のフロントでバイトしていました。

 ボウリングの球を投げるコースの事をレーンと言います。ボウリング場のフロントというのは、どのお客さんに、どのレーンを使ってもらうか、色々気を使っているんですよ。カップルとカップルは隣のレーンにして、同性同士のグループの隣にならないようにしたりしているのです。お互い邪魔になりますからね。

 その中で気をつけなくてはいけないのは、常連さんや、上級者への対応です。私がバイトしていたのは、ボウリング・ブームが去った、だいぶ後の1980年代の終わり頃の事ですが、それでも毎日のようにボウリング場に来る常連さん達が、数人いたのです。もちろん上級者、マイボール、マイシューズ、プロテクター持参です。

 ボウリング場によって違うでしょうが、上級者にはフロント正面のセンターのレーンを使ってもらいます。そして明らかな初心者には、絶対にセンターのレーンを使わせてはいけないのです。外側のレーンを使ってもらいます。初心者の中には、乱暴なボールの投げ方をする人もいるので、レーンが傷ついてしまうのです。わずかなゆがみが点数に影響します。うっかり初心者を真ん中のレーンに入れたりすると、すごく叱られます。センターのレーンは神聖なのです。

 常連さん達は、時々フロントの私達にジュースをおごってくれたりしました。かっこいい大人というのは、さりげなくこんな気遣いが出来る人なんだなと、憧れたものです。

 一日バイトを休んで、次の日にフロントに立った日のこと。常連さんの一人がニコニコ顔でやってきました。

「いやいや、その事は、もういいから、もういいから・・・」

と、おっしゃる。私は何のことか分からなくて、キョトンとしてしまいました。常連さん、私の反応にガッカリしているようです。何事だ?

 他のバイトの人が教えてくれました。実は、この常連さん、前日にパーフェクトを出していたのです。パーフェクトというのは1ゲーム、全投全ピンを倒すことです。300点。パーフェクトは、めったに出るものではないのです。半年ほどボウリング場でバイトしていましたが、一度も見たことがありません。

 パーフェクトが出たということで、そのボウリング場は、前日すごく盛り上がっていたらしいのです。休んでいた私は知らなかったのですね。業務連絡ボードに書くような事ではありませんが、誰か事前に教えて下さいよ。常連さんをガッカリさせてしまったじゃないですか。

 あと一投でパーフェクトだという瞬間、センターのレーンにいる常連さん達はジャマしないようにプレーを中断して見守り、外側のレーンにいる初心者やカップルや同性グループもみんな注目したんでしょうね。パーフェクトが決まった瞬間、どれだけ盛り上がったのでしょう?

その場に居合わせたかったなぁ!
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イラスト by freehand

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プロフィール

HN:
三浦 周二朗
性別:
非公開

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