ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
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2000年代のこと、色々あって、ビッグバンドと呼ばれる30人ぐらいの編成のミュージシャンの演奏をバックにソロで一曲だけ歌うことになりました。
私は役者の経験こそありますが、音楽はど素人で、本番当日の緊張は今までに経験したことのないものでした。
楽屋に知り合いは一人もおらず、震えそうに不安に感じておりますと、一人のミュージシャンが2Lペットボトルで透明の飲み物を飲んでいました。ペットボトルのラベルははがしてあり、マジックで大きく「水」と書いてあしました。奇妙なことをするなぁ、と思いましたが、話のきっかけにこう声をかけました。
「わざわざ『水』と書いてあるということは、音楽業界には水と間違えそうな透明な液体があるんですね?」
そのミュージシャンは笑顔で
「そうです! 飲みますか?」
緊張でのどがカラカラでした。お言葉に甘えて、疑うことなく一気に頂きました。
焼酎でした。
演奏前にお酒を飲んでいると叱られるので、ペットボトルに移し替えてわざわざ「水」と書いて飲んでいたんですね。
私はお酒が飲めません。真っ赤になって、フラフラになりました。フラフラの状態でビッグバンドの前で一曲歌いました。あまり記憶がありません。意外と好評でした。まぁ、緊張は解けましたかねぇ?
皆様は今宵も「ミュージシャンの水」をお楽しみください。私はもう飲みませんよ!
English
イラストby studiostoks
2000年代初め、私は大阪在住で、無名の若い芸人さんにネタを書いたりしていました。
その関係で芸能事務所の「ネタ見せ」という現場に居合わせたことがあります。芸人さんたちが、一組一組、事務所の人や先輩に漫才やコントを披露して意見をもらうのです。
その日は、その世界の大先生がいらっしゃるということで、皆さんいつもより緊張していたそうです。大先生はご高齢で威厳があり、少し近づきがたい雰囲気の方でした。大先生はネタを見た後、一組一組に厳しい批評を浴びせます。若い芸人の中には泣き出しそうな人もいました。
ただ、この日、少し気まずいことが起こりました。
今から冷静に考えれば、悪いのはその若い芸人さんです。他の芸人さんたちが漫才やコントをしたのに対し、その芸人さんはギターを持って歌いだしたのです。それはいいんです。問題はオリジナル曲を歌ったのではなく、当時大ヒット中だった人気ソングを歌ったのです。それもいいんです。問題は
「だれだれの何々という曲を歌います」
と告げずに、歌いだしてしまったことです。おそらく
「こんなに人気のある歌なんだから説明する必要ない」
と思ったんでしょうね。
運が悪いことに大先生、その歌を、その時、初めてお聞きになったようなのです。おそらくその芸人さんのオリジナルソングだと思ったんでしょうね。そして大先生、その大ヒットソングに対してダメ出しを始めてしまったのです。歌の歌詞が悪いと…。
当時私も若い世代。笑いをこらえるのに必死でしたが、中年も年季の入ってきた最近はこの時の大先生のお気持ちがよくわかるようになってきました。
最近のヒット曲はどんな曲か知りません。聞いても、なぜその曲がヒットしているのか理由がわからないことが多々あるのです。
あの時、できることだったなら、部外者だった私が、こっそり大先生に耳打ちすればよかったんですね。
「先生! これは大ヒット曲をカバーしてるんですよ!」
でも近づきがたい雰囲気だったんだもん、怖くてそんなことできませんでした。
私はもちろん大先生になる予定はありませんが、できるだけ近寄りがたい雰囲気は出さないように気を付けようと思います。尊敬される老人ではなく愛される老人になれればいいなぁ
English
イラスト by はなぶー