ブログというか、まぁ思いついたものを書いています。 ショートアニメを作っています。元舞台役者です。
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院生時代、私は、とある先生と仲良くなって、三日と空けず、その先生の研究室へ遊びに行っていました。先生はイヤな顔一つせず、私の相手をしてくれていました。
ある日、いつものように研究室に遊びに行くと、先生は真剣に珍しい本を読んでいました。どう珍しいかというと、その本は表紙も背も裏表紙も、真っ白で、文字も絵も描いてないのです。そんな本を見たことがないので不思議に思い、どんな本か中を覗きました。覗いてみると、なにか、高校の教科書のような・・・。
私が覗いていることに気づいた先生は、さっと、その本を隠して立ち上がり、私に深々と頭を下げて言いました。
「この事はどうかご内密に」
いつもは、くだけた口調で私と話す先生が、改まって頭を下げたので驚きました。もちろん、人の秘密をかぎまわるのはよくありませんので、その謎はそのままほったらかしにしました。
それから十年ぐらいして気づきました。ああ、あれは本当に、教科書だったんだろうな。
小、中、高で使われる教科書は複数の業者が作り、その中から検定したり、採用したりするわけですが、その過程で有識者が助言するのだそうです。推測ですが、その作業のために有識者には表紙や奥付、出版社の名前などの印刷されていない、真っ白な表紙の本が配られるのではないでしょうか。先入観があったり、癒着があったりしたら、いけませんからね。
おそらく、先生は、その有識者の一人だったのです。そして、その事は秘密なんですね。教科書をどうするかというのは難しい問題ですし、色んな人の利害がからみますからね。バレたら煩わしいことになるんでしょうね。
先生はいつも私の相手をしてくれていたし、研究室は散らかっていたし、ヒマでダメな人だと思っていましたが、私が思っていたより、偉い先生だったのかも知れません。
あれから二十年。先生も出世されたことでしょう。もしかしたら、新しい元号の候補を提案した有識者の一人は、先生かも知れませんよ?
English
イラスト by Totallypic
私は院生時代、基本的にはラフな格好で登校していました。ヨレヨレのシャツとジーンズ。
ところがある日、A先生に注意されました。
「院生は、学部生とは違う。大学にはネクタイを締めてスーツで来なさい」
自分の服装に主義主張があったわけではありませんでしたので、スーツを新調しました。大学ではスーツで過ごすことにしました。
ところがある日、B先生に注意されました。
「何を格好ばかりつけているのだ! そんな服やネクタイを買う金があったら、本の一冊でも買って読みなさい!」
A先生のおっしゃることも、B先生のおっしゃることも分かります。どちらも尊敬しています。
結局、A先生と会うときはスーツにネクタイ、B先生に会うときはラフな格好ということにしました。どちらも私のことを思って、おっしゃってくださっているのが分かりましたからね。
何より、AB二人の先生は大切なことを教えてくれましたよ。平日の昼間、成人男性がスーツを着ているか、ラフな格好をしているかで、初対面の町の人の反応が違うということです。よく作用する場合も、悪く作用する場合もあります。でも、うまく利用できれば、こんな便利なモノはありませんね。
English
イラスト by maimu